しっかりとした睡眠をとることは、覚えたことを記憶として定着させたり認知症のリスクを減らすことに繋がります。ですので、質の高い睡眠をとれるように心がけましょう。

記憶力を保つためには睡眠が重要

仕事や勉強だけではなく、人との会話や家事、自身に課せられた社会的な役割を果たす際にも「記憶力」は重要なポイントとなります。

人から言われたことや、今日のうちに片付けなければならないことを、すぐに忘れてしまうような状態では、日常生活をスムーズに送ることは難しくなってしまいます。

自分自身でも記憶力の低下を実感し、焦りやストレスを感じてしまうケースも多くなるでしょう。

記憶力に関する問題は、年齢と共に表面化しがちです。
しかしこれ以外にも、生活習慣の乱れが原因で記憶力の低下が引き起こされてしまうケースもあります。

記憶力と関連が深い生活習慣といえば、ずばり「睡眠」です。
記憶力と睡眠の関連性と、睡眠が重要だと言われる理由、さらに記憶力アップの面から見て理想的な睡眠のとり方について解説していきます。

徹夜をして覚えた記憶は定着しない

徹夜をして覚えた記憶は定着しない

たとえば大事な会議の前や、重要なテストの前夜。
あれもこれも、とにかく頭の中に詰め込んでしまおう!と、最後の努力をする方は少なくないでしょう。
いわゆる「一夜漬け」と呼ばれる状態ですね。
もう時間がありませんから、睡眠時間を削って、物事の記憶に取り組むケースも珍しくありません。

しかし記憶のメカニズムから見ると、これは完全に誤った方法です。
徹夜で何かを覚えようと頑張っても、残念ながらその記憶が定着する可能性は、極めて低いのです。
もしかしたら、明日の会議やテストを乗り切ることはできるかもしれませんが、長い目で見るとその知識は定着しません。
テストや会議が終わったあとに、それに気づいて愕然としてしまう方も多いことでしょう。

ではなぜ徹夜で記憶しようとしても、定着が難しくなってしまうのでしょうか。
これには、記憶のメカニズムが関連しています。

人の記憶は、以下の二つの種類に分けられています。

  • ・短期記憶……その日やるべきことや、今日食べたものなどの記憶
  • ・長期記憶……勉強で得た知識など、長く蓄積していく記憶

人が経験した全てのことを「長期記憶」として保存しようとすれば、脳内の記憶メモリはたちまちパンクしてしまいます。
このため、「すぐに忘れて良い記憶」と「長期間によって保有し続けるべき記憶」に分類して対応しているのですね。
人が何かを記憶したとき、まず蓄積するのが「短期記憶」です。
この段階ではまだ、脳も「短期記憶として入ってきた膨大な内容の中から、どれを長期保存するべきなのか」がわかっていません。
脳の内部でこれらの情報を整理整頓する必要があり、人間はこの「整理整頓」の作業を、眠っている間に自然に行っています。

もし徹夜で何かを記憶しようとすれば、整理整頓する時間がないまま、短期記憶ばかりが積み重なっていくことになります。
残念ながら人間が短期記憶できる内容量には限界がありますから、それを超えた分はどんどん忘れていってしまうでしょう。
また睡眠不足に陥れば、集中力や判断力も欠いてしまいます。
脳の記憶領域をフル活用することは、ますます難しくなってしまいます。

「明日までに覚えなければいけないこと」がたくさんあるときに、「勉強をやめてただ眠る」というのは勇気が要る行動かもしれません。
しかし、脳内のメカニズムについて考えてみると、「スムーズに記憶するためには、睡眠も必要なステップの一つ」となります。
無駄な時間と捉えるのではなく、「短期記憶」として手に入れた情報を、「長期記憶として長く定着させるための時間」と認識するのがオススメです。
気持ちを切り替えて、スムーズに眠りにつくことができるでしょう。

若い世代も油断禁物……睡眠不足が続くと認知症のリスクがアップ!

若い世代も油断禁物……睡眠不足が続くと認知症のリスクがアップ!

若い時期には、睡眠不足の状態が続いても、体力だけで乗り越えられる可能性も高いもの。
自分自身が無理を重ねていることにも、気付いていない可能性もあります。
記憶力の低下が気になっても、それと睡眠不足とを関連付けて考える方は少ないでしょう。

しかし慢性的な睡眠不足は、将来的な「認知症」のリスクも高めてしまうと言われています。
認知症の中には、以下のような種類があります。

  • ・アルツハイマー病
  • ・脳血管性認知症
  • ・レビー小体型認知症

この中で、圧倒的に数が多いのがアルツハイマー病となっています。
アルツハイマー病を発症する原因となるのが「βアミロイド」という種類のたんぱく質で、これが脳に溜まって神経の細胞を壊してしまうことから病気の発症につながるのです。

さて、この「βアミロイド」ですが、実は「特定の人のみに発生するもの」というわけではありません。
どんな人でも、「βアミロイド」によって神経細胞が破壊されてしまう可能性はあります。
しかし一方で「βアミロイド」は、睡眠中に処理され、消されるという特徴も備えています。
日中の活動でアミロイドが発生しても、夜にきちんと眠れている場合には、大きな問題にはつながらないというわけですね。

加齢と共にアルツハイマー病の発症リスクが高まるのは、夜の睡眠の質が低くなるためです。

  • ・熟睡できない
  • ・夜に何度も目が覚めてしまう

これらの不満を抱える高齢者の方も多くいますが、睡眠が浅くなれば、当然処理できるβアミロイド量も少なくなってしまいます。
処理しきれなかったβアミロイドが徐々に神経細胞を破壊し、アルツハイマー病の発症に至る、というわけです。

もちろんこれらの流れは、「高齢者」のみに起きるものではありません。
慢性的な睡眠不足に陥れば、まだ比較的若い世代であっても、全く同じ仕組みでアルツハイマー病を発症してしまうリスクがあります。

しっかりと睡眠をとることを意識しよう

しっかりと睡眠をとることを意識しよう

記憶力低下を防ぎ、そして将来の認知症リスクを低くするためには、毎日きちんと睡眠をとることが重要です。
「普段からあまり眠っていない」なんて自覚がある方は、これを気に睡眠習慣について見直してみてください。

とはいえ「しっかりと睡眠をとる」ということは、ただ単純に「だらだらとベッドに入っていれば良い」というわけではありません。
以下の3つのポイントを意識して、質の高い睡眠をとれるよう心掛けてみてください。

  • ・睡眠時間は6時間半~7時間半を確保する
  • ・眠る前のスマホやパソコンの利用は避ける
  • ・寝室の環境を整える

記憶力の面から見ても、認知症予防の面から見ても、「最低でも6時間から6時間半の睡眠が必要」ということがわかっています。
これぐらいの時間を確保できるよう、生活全体を見直してみてください。

また眠る前にスマホやパソコンを利用すると、脳が活性化して深く眠るのが難しくなってしまいます。
せっかく「起きる時間の7時間半前」にベッドに入ったとしても、無駄になってしまうので注意が必要です。

最後に寝室の環境についてですが、何よりも重要なのは「自分がリラックスして過ごせること」です。
清潔な寝具を使うのはもちろんのこと、明りや香りにまで目を向けてみることで、お気に入りの空間が出来上がります。

これらのポイントに加えて、「今日中にこれだけは覚えておきたい」というポイントがあるなら、こちらも「睡眠時間」をうまく活用してみてください。
記憶と睡眠のメカニズムから、眠る前の30分に覚えた内容は、長期記憶として分類されやすいという特徴があります。
覚えにくく重要なことほど眠る直前に覚え、頭に入れたら気持ちを切り替えてゆっくり眠るのが、賢い方法となります。

まとめ

人間の記憶と睡眠の間には、深い関係があります。
睡眠中に脳がどんな活動をしているのか、自分で把握することは難しいもの。
しかし実は、人間にとって非常に重要な時間だと言えるでしょう。

記憶力が高い人は、ただそれだけでテストで良い点をとりやすくなったり、周囲とのコミュニケーションを円滑に楽しみやすくなったりします。
仕事面で言えば、上司に注目されたり、取引先の人から信頼を勝ち得ることにつながったりもするでしょう。
あれこれと詰め込み式で「覚えなくちゃ!」と焦るよりも、「睡眠」が持つパワーを正しく取り入れるのがオススメの方法です。
時間に余裕を持って記憶を進めていくことで、睡眠時間もフル活用できることでしょう。