ど忘れやもの忘れと認知症には大きな違いがあります。
症状を理解することで、予防や対処法を知ることができます。
健忘症やアルツハイマー病との違いも解説します。

物忘れや認知症など記憶にまつわる症状

もの忘れ=自覚症状がある、認知症=自覚症状がない

認知症の代表的な症状にもの忘れがあります。もの忘れが多くなると認知症を心配してしまうこともあると思いますが、正常な脳の老化現象でも、もの忘れは起こることがあります。認知症と老化によるもの忘れの違いはどのような点なのでしょうか。

老化によるもの忘れと認知症の大きな違いは、自覚症状があるかないかです。老化現象によるもの忘れには自覚症状があります。また、体験したこと全てを忘れるわけではなく、一部を忘れるという特徴があります。症状の進行は遅く、1~2年では大きな変化はありません。

一方、認知症によるもの忘れは自覚がなく、体験したことの全てを忘れるという特徴があります。そして、症状の進行が早く、1~2年でもの忘れが増えていくことになります。ただし、初期の認知症であればもの忘れの自覚がある場合もありますので、以前と比べて不安を感じるようであれば専門の医療機関に受診するようにして下さい。

もの忘れがより病的になった症状が健忘症

正常な脳の老化によるもの忘れは病気ではありませんが、これがより深刻に病的になることがあります。深刻化したもの忘れを健忘症と言い、発症以降の記憶が抜け落ちてしまうものを前向性健忘、発症より前の記憶が抜け落ちてしまう逆行性健忘があります。また、健忘の期間を全て思い出せない状態を全健忘、一部は思い出せる状態を部分健忘と言います。

健忘症は外傷によって発症することもありますが、外傷がなくても発症します。その原因はほとんど解明されておらず、CT検査やMRI検査を行っても脳の異常が見られません。

要因の1つとして考えられているのはベータアミロイドという物質で、高齢になると増える物質です。神経伝達の援助をしているアストロサイトという細胞がベータアミロイドを有害物質と認識して炎症を起こさせることにより、脳にダメージが与えられ萎縮してしまうと考えられていますが、その他の要因も関係している可能性があると言われています。

アルツハイマー病は認知症の1つに分類される

あまり知られていませんが、「認知症」は病名ではありません。もの事を認識したり、記憶したりする能力が衰え、社会生活に影響が出る状態のことなのです。アルツハイマー病は認知症の1つであり、認知症を引き起こす原因として最も多い疾患で、6割以上と言われています。

アルツハイマー病は、脳の中にβアミロイドと呼ばれるタンパク質がたまることが原因の1つと考えられています。Βアミロイドが脳全体にたまることで健全な神経細胞が欠落し、脳の働きが低下していき、萎縮を進行させるというメカニズムです。

アルツハイマー病は場所や時間などを認識できなくなり、記憶障害を引き起こします。運動機能にも影響が出るため体の動きも不自由になります。進行の度合いは個人差があるため、発症から数年間は自立した生活ができる人もいれば、短期間で寝たきりになる場合もあります。抗認知症薬により進行を遅らせることができるようになりましたが、根本的な治療法はまだ見つかっていません。